いなかっぺい

 皆さんは、「いなかっぺい」といって、何を思い浮かべるでしょうか。普通に使う言葉としては、今は、差別用語として使わなくなりました。私は、東京生まれですので、みんなは、よく子ども同士でけんかをするときなど、相手をけなす言葉として使っていました。ですから、今でも心が痛む思い出があります。中学の修学旅行で京都・奈良に行ったとき、修学旅行列車「ひので号」には、2校が乗り込みました。私たちの中学校は、千代田区立でしたが、外を歩くときには、革靴でなければいけませんでした。(ひとつには、構内履きと区別するために)その列車に乗っていたもう1校は、やはり都内の公立校だったのですが、靴はいわゆるズック(今で言うスニーカー)だったのです。ですから、列車の境目に乗っていた同級生たちは、相手の中学生に向かって、「いなかっぺ、いなかっぺ!」とはやし立てていました。私が言っていたわけでもありませんでしたが、それを聞いていて特別に悪いことだとは思っていなかったので、申し訳なく思っています。それは、言った相手に対してではなく、なんだか、田舎の子のことをけなしているように感じるからです。子どもは、特別に差別的な意味を持っているわけではありませんが、「おまえの母ちゃん、でべそ!」と言ったりしたものでした。今でも、子どもたちは、けんかをしたときなど、相手をけなす言葉を言うことがあります。そのなかで、人格を否定したり、本人のせいではないものであったり、他の人を差別的にあつかうような言葉は、大人として使わないようにしたいものです。子どもたちは、始めはそんなに悪気ではなく使うことも多いのですが、大人の言葉を真似し、それが次第に刷り込みになっていくからです。
 また、少し硬くなりましたが、この「いなかっぺ」という言葉を思い出したのは、先日八戸に行ったからです。地元の人たちは一緒にされるのを嫌がりますが、私は、八戸も青森県なので、どうして津軽地方も一緒に考えてしまいます。ということで、思い出すものに青森出身の柔道少年『いなかっぺ大将』があります。これは、川崎のぼる原作の少年漫画作品で、通称「大ちゃん」が、赤い越中褌に、風呂敷で作った袴をトレードマークにして、修行に励むつもりが、いつもずっこけてばかりの日々を続けているというはなしです。もうひとつ、伊奈かっぺい(いな かっぺい)という、青森県弘前市生まれの、津軽弁を愛する根っからの津軽衆であるタレントがいます。「いなかっぺい」というと、そんなイメージですが、越川禮子さんの「江戸の繁盛しぐさ」には、こう書かれています。「井戸の中の蛙は世間知らずで何でも自分が一番と思い勝ち。そういうことでは世間は渡れないよ、と戒めて呼んだのが『井蛙っぺい(せいあっぺい)』だ。『いなかっぺい』は、この井の中の蛙がもとだという。つまり、学歴、職業、地位などで差をつけたがる根性の人をさしている。」そうだったのです。「いなかっぺい」は、田舎の人のことではなく、井の中の人のことを言うのだったのです。もし、そうであったら、その言葉をけなし言葉として使ってもよいかもしれませんね。ですから、今は、差別用語なので使わないのではなく、誤解されやすいので使わないのだそうです。人の人格を否定するようなけなし言葉がいけないというと同時に、人の人格を見ないで、外側の姿を見て人を判断するのもいけないことだということも子どもたちに伝えていきたいですね。

いなかっぺい” への2件のコメント

  1. 「いなかっぺい」は「井の中の蛙」がもとだったんですか。言葉にはいろんな意味が隠されているからおもしろいですね。
    大人の真似をして子どもがおかしな言葉やよくない言葉を使うことはよくあります。子どもは大人の話をよーく聞いています。びっくりするくらいよく聞いています。子どもに与える影響をもっと考えて言葉を使わないといけないですね。外見で人を判断しないことも一緒です。大人が行動を見直してみることからはじめなければいけませんね。まずは自分からです。

  2. 小学3年生から東京語の勉強を始めましたが、そのきっかけをつくったのは現在埼玉に住んでいるおばさんでした。「ズーズー弁でしゃべると、いなかっぺい、と呼ばれるよ。」というものでした。私はそれ以前に2,3度東京には行っていましたので「いなかっぺい」という言葉を聞いて何の抵抗もなく「田舎兵衛」のことだと勝手に解釈していました。確かに周りには田んぼや畑、古びた家々があります。東京は貿易センタービルをはじめとする高いビルがあちこちにありました。確かに東京は「田舎兵衛」ではない。妙に合点して語学に励んだものです。それにしても今日の今日まで「いなかっぺい」が「田舎兵衛」だと思い込んでいた私は「学歴、職業、地位などで差をつけたがる根性の人」との真意を知って別の意味で「いなかっぺい」にならないように気をつけようと思ったのでした。

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