美術館の楽しみ方

 日本中には、さまざまな美術館があり、それぞれ特徴があります。そして、そこでは、定期的に企画展を行っています。しかし、もともとその美術館が所蔵している作品による常設展というものがあり、それはおおむね時期には関係ありませんので、時間があったりする時は、そこを訪れると楽しめます。しかし、お目当ての作品が、たまたま、どこかの美術展に貸し出していたりすると、がっかりしますが。また、美術館の建物そのものを楽しむこともできます。美術館は、著名な建築家が設計していることが多いからです。また、その美術館の建てられている環境を楽しむこともできます。地方では、特に個人的な美術館は、その建物自体が、周りの景色と一帯になってひとつの美術品として存在していることが多いからです。美術館は、そんなさまざまな楽しみ方ができます。
 それらの中で、私としては、フランスの建築家ル・コルビュジエが設計した本館のすばらしさと、所蔵品のすばらしさとアクセスの便利さからいって総合的一番はなんといっても、上野にある「国立西洋美術館」でしょう。当館は、松方コレクションが核となった、西洋の美術作品の所蔵品が中心です。絵画だけでなく素描や版画のコレクションもおおく、彫刻作品も所蔵しています。建物はよくありませんが、作品と、便利さからいうと「ブリジストン美術館」は、東京駅の近くにあり、印象派、ポスト印象派、マティス、ピカソらの20世紀美術など約1600点の作品が収蔵されています。日本の画家の青木繁や浅井忠、梅原龍三郎などの有名な作品も多くあり、どの絵も教科書で見たものばかりです。所蔵作品でいうと、なんといっても東京の美術館ですね。建物でいうと、私の好きなのは、新しいものでは、安藤忠雄設計の長野県にある「小海町高原美術館」とか、隈研吾設計の「長崎県美術館」で、古い建物を生かしたものとして、倉敷の日本最初の西洋美術中心の私立美術館である「大原美術館」とか、安曇野の「碌山美術館」などはいいですね。壮大さでいうと、箱根彫刻の森美術館が挙げられますが、行ってみて感動したのは、2005年7月1日にグランドオープンした札幌のある「モエレ沼公園」です。イサムノグチ氏による、「公園をひとつの彫刻」とするダイナミックな構想により造られています。もうひとつ、最近知った美術館の楽しみの一つに、その建物の窓から見える切り取った景色を、ひとつの美術品としてみることです。長野県の「北原美術館」は、窓の向こうに諏訪湖が山を背景にひとつの絵画のようです。また、菊竹清訓設計の「島根県立美術館」は、目の前の大きなガラス面いっぱいに宍道湖が広がり、そこに沈む夕日が見えるようになっているために、閉館時間が、3月から9月は、日没時刻の30分後までとなっています。
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     高遠美術館
 また、今年訪れた高遠美術館の窓からは、まさに絵画が何点か並んで展示されているような錯覚をしました。しかし、どこの美術館よりも窓からの眺めがすばらしいところがあります。それは、私の園内にある「絵本の森美術館」です。そこには、絵本の原画が展示されていますが、その展示絵画の反対側は、ガラス戸になっていて、窓枠を額縁に見立てて、そこからの景色を絵画のように見立てています。その絵画は、私にとっては、どんな芸術作品よりも優れた芸術作品だと思います。それは、そこで遊ぶ子どもの姿です。
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 こんなすばらしい芸術作品を、ないがしろにする人がいるなんて、信じられませんね。

美術館の楽しみ方” への4件のコメント

  1. 今日のブログは鳥肌をたてながら拝読しました。
    藤森先生のおかげ?で、絵画鑑賞が趣味の一つになり、美術館めぐりが私の楽しみになっています。私も上野の「国立西洋美術館」大好きですね。建物もいいし、何と言っても、コレクションが優れている、と思っています。美術館の建物それ自体が美術品であったり、借景や周辺環境への配慮によって美術館の付加価値を高められている施設を訪ねると、なんか得した気分にもなります(ちょっとせこいですが)。せいがの森保育園の「絵本の美術館」ではお邪魔するたびに絵本の「原画」が楽しめて最高ですが、窓枠からみる生きた芸術作品は実に毎回見逃していました。楽しみ方を知らないとどれだけ損しているか、大いに反省しながら読んだ今日のブログでした。

  2. せいがの森保育園の「絵本の森美術館」の考え方に驚かされ、作品の写真をしばらく眺めさせてもらいました。私は絵画のことなどはよく分かりませんが、この作品にはひきつけられました。
    今日のブログを読んで、うまく説明できませんが、子どもたちのこと、園のこと、自分のことなど、いろんな事を考えて「うーん」とうなってしまいました。

  3. 同県にある島根県立美術館には何度か訪れたことはあるのですが、なかなか各地の美術館に行くという機会が今まではありませんでした。絵画のことは全く分からないのですが、なぜだか建築家の方に憧れのようなものを持っているので、建物としての美術館を実際に自分の目で見てみたくなりました。特に隈研吾さんの設計した美術館に行ってみたいと思っています。機会を逃さずにぜひ訪れてみたいです。絵本の森美術館も気になります。どんなものか想像できないので、もっと気になります。

  4. 写真や作品の良さは、その対象となるものの一瞬に命を宿すことができるところだと感じました。普段、子どもたちと生活を共にしているにも関わらず、見方というのは“流れ”を追うかのようで、“瞬間”を切り取ることに難しさを感じます。しかし、写真や作品にはその瞬間に主点をあてて、その時にしか出せない魅力を存分に感じさせることが可能となります。窓枠を額縁に見立て、そこに映る景色を絵画のように感じることができる環境があっても、4年間もの間、その環境に気がつくことなく過ごしてしまっていました。その瞬間に大きな意味があることが理解できれば、切れ目のない子どもたちの生活に、実は多大な変化が起きていることを感じさせることにつながっていきそうです。

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