好き嫌い

 「キャベツ」と「レタス」の話題をもうひとつお話します。皆さんは、キャベツとレタスのどちらが好きでしょうか。漠然とそう聞かれると、たぶん、食べるときの好き嫌いで答える人が多いでしょうね。食べるときでも、味だけでなく、舌触りや、色も影響するでしょう。また、違う聞き方をするとどうでしょうか?形はどちらが好きですか?色はどちらが好きですか?感触はどちらが好きですか?と聞かれると答えは違ってくるかもしれません。好きですか?と聞かれて、どの部分を優先して答えるのでしょうか。以前、子どもの絵本の編集委員をしていたことがありました。そのときに、4月号の表紙を決めることになり、「キャベツ」か、「レタス」か議論をしたことがありました。そのときは、どの観点から選ぶのでしょうか。そこで、現場の保育者さんに、ふたつの写真を見て、なにもいわずに印象でどちらがいいか聞いてみることにしました。何園かで行いましたが、どこの園でも、まったく答えが、同数で分かれました。おおよその傾向として、年配者は「キャベツ」、若い人は「レタス」と答えた人が多くありました。キャベツを選んだ人は、その理由として、「色がはっきりしているから」「形がはっきりしているから」で、レタスを選んだ人は、その理由として、「形がソフトだから」「色が淡いから」そして、なにより「フレッシュで、さわやかな感じがするから」というものでした。そのときの私の意見は、「絵本を指導するときに、4月号として、モンシロチョウなどと関連して春を認識させたり、身近な食事からのイメージを膨らませるには、料理法の多い「キャベツ」のほうが子どもに話しやすいのではないだろうか。また、葉の筋を道になぞらえたりして、そのあとに子どもの好奇心を膨らませやすいのではないだろうか。」といろいろと考えてしまいます。
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    キャベツをテーマにした運動会プログラム
 そこで、当の本人である子どもはどう思うかを聞いてみることにしました。すると、ほとんどの子が、食べるのは「キャベツ」の方が好きなのに、絵として、雰囲気として、理由はよくわからないけれど、「レタス」の方が好きと答えました。でも、それでいいのかもしれません。子どもたちの毎日は、理屈ではありません。大人の好みの押し付けで過ごすのでもありません。絵本の内容にしても同じようなことに出会うことがあります。どうしてこれが面白いのか大人にはよくわからない場合があるのです。逆に、面白いのではと思うのに、子どもは少しも喜ばないこともあります。とくに、読んでほしいような、ためになるような本は、その思いが強いほど子どもは嫌がることが多くあります。矢玉四郎さんの「はれぶた」シリーズや、那須正幹さんの「ずっこけ」シリーズなどは、始めは大人の評価はあまり高くありませんでした。しかし、子どもの絶大な人気を得て、あらためて評価されたものです。私の好きな作家の山中恒さんも、「児童書は、ただ面白ければよい:」とまで言い放ち、自分の書いたものを「児童文学」と呼ばずに「児童読み物」と呼びます。子どもたちが、なんとなく「おもしろい」と思う裏には、それなりの理由が潜んでいるのかもしれません。それは、決して、大人の世界での享楽的なものとかではなく、子どもの共感を得るものだからです。そこで、子どもに「この本を読みなさい!」「この本は、おもしろいよ」と押し付ける前に、本を読み聞かせたあとなどに、「ああ、面白かった!」とか、「ああ、かわいそうだね。」と、自分の感想を、大人は言うだけでもいいと思います。