若冲

 昨日の日曜日には、上野の東京国立博物館で開催中の「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展」に行ってきました。8月14日には、入場者数が20万人を突破したそうです。ただ、昨日は、私も以前に行った「ルーブル展」が最終日ということもあって、そちらの方が混んでいたようです。
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 この絵画展は、伊藤若冲中心の江戸絵画展ですが、それよりも興味を持ったのは、アメリカ・カリフォルニアの「プライスコレクション」というものです。このコレクションは、魅力に満ちた江戸絵画のコレクションとして世界的に知られています。半世紀前、ジョー・プライス氏は当時美術史家にも見過ごされていた江戸時代の個性的な画家たちの作品に目を奪われ、収集を始めたそうです。彼は、大学を卒業して、彼の父親の友人であり、東洋美術のコレクターでもあった建築家フランク・ロイド・ライト(今明治村に保存されている帝国ホテルを設計した人)の付き添いで立ち寄ったニューヨークの古美術店で、画家の名前も伝記も知らない一幅の葡萄を描いた水墨画に心惹かれました。そこで、彼は、大学の卒業記念として買うはずのスポーツカーの代わりに、名前も知らない画家の1枚の絵を手にしたのです。これは1953年、彼が24歳の時のエピソードです。その水墨画こそが若冲の作だったというわけです。ここから、江戸絵画コレクションは始まり、その後「ただ見て気に入ったものだけを集め」たら、クオリティーの高い江戸絵画のコレクション、中でも超貴重な若冲コレクションが出来上がったというのです。彼自身が、そのときのことを、ブログでこう言っています。「50年前、まだ20歳過ぎの若者だった私は、遊びに行ったN.Y.にて伊藤若冲に出会い、そして衝撃を受けました。それが若冲の描いた絵であることも、さらには日本画であることさえ知らぬまま…。人生におけるターニングポイントとは突然やってくるものです。私にとって若冲との出会いは、大きな大きな分岐点でした。」コレクションの中心は若冲の作品ですが、その他にも、独自の自然観察眼と個性豊かな表現技術であり、今注目を集めている既成の江戸絵画観を変える力強い魅力にあふれた作品がコレクションされています。そんな彼ですから、絵の見方も独特で、こんな提案もしています。「学術的または資産的価値など“難しいこと”にはあまり興味がありません。作家名にすら、こだわらないほどです。大切なのは、作品の前に立ったときに何を感じるかということだけ。何かを感じられる作品が、すなわち“名作”なのですから。ぜひ、みなさんも同じように、素直な感覚で楽しんでいただければと思います。ただし、ファーストインプレッションだけで判断するのではなく、できれば、よーく心に染みこませるように鑑賞してみてくださいね。かつて、同じ日本、同じ江戸を中心に展開されていた文化、その中の人間模様を想像してみると面白いですよ。」そこで、展示法も工夫されています。「江戸時代にガラスケースはなかった」というプライス氏の鑑賞態度により、ガラスケースを用いず、光の効果に工夫を凝らした展示室を1室設けてあります。昔は自然光(日光、月光)や蝋燭の灯りで鑑賞をされており、時間によって、その光の当たり方が変わるということで、光が明るくなったり、暗くなったり変わるのです。そうすると、展示されている作品が、動くように、変化します。いろいろな意味で、とても、興味深い展示でした。