私は、以前のブログにも書きましたが、あまりビールには詳しくないので、レストランなどでビールを注文するときに「アサヒにしますか?それともキリンにしますか?」と聞かれると困ります。どちらがどんな味なのかよくわからないので、はっきりした好みがないからです。世の中の人は、わかっているのでしょうね。2001年に48年間続いたシェア第1位の座がキリンからアサヒに代わったことにびっくりしました。ずっと、キリンでしたから。アサヒに代わったのは、「スーパードライ」の発売です。ひとつのヒット商品が、長い間の常識をも覆すほど、時代を変えてしまうものだと感心したものでした。しかし、こうしたヒット商品は、逆にその後のさまざまな弊害になることがあります。その成功のために、新たな挑戦をする勇気がなくなってしまうからです。安定の中から、失うものがあるのが怖いのです。少しずつそれが減ってきても、また、時代が新しくなっても、その栄光にしがみついてしまうのです。ビール界も今、大きな変化をしています。発泡酒、第3のビールと、新ジャンルが産まれているのです。アサヒは、スーパードライという大ヒット商品があるせいで、この新しいジャンルへの開発が遅れたようです。今年の上半期で、5年ぶりにビール系飲料のシェアで、キリンがまた首位になりました。このことに、新本部長は、「アサヒの企業体質を変えろというメッセージだと感じた」と言っています。同様に、キリンがアサヒに1位の座を奪われたときに、商品開発、生産、販売、組織のあらゆる面からの顧客本位の製品を開発する体制作りに取り組みました。さらに少子高齢化、若年層のビール離れをいち早く察知し、「ローアルコール・ビバレッジ市場」の開拓に成功しています。どんなことに関しても、時代が動き、その時代の求めるものが変わってきます。それをいち早く察知し、改革をしていかなければ、気がついたときには、誰も見向きもしなくなってしまっています。
キリンビールといえば、最近行った長崎で知ったことがあります。麒麟(きりん)とは中国の伝説上の動物で、鳥類の長である鳳凰と並んで、獣類の長とされています。オスの麒麟を麒(き)、メスの麒麟を麟(りん)と呼びます。日本が幕末維新の激動期を抜け、安定した成長期に入った1888(明治21)年、一つのビールが市場に登場しました。ドイツ風ラガービールで、ラベルにはこの麒麟が描かれていました。この霊獣の名を冠し、「キリンビール」と銘打たれたこの商品は、各地で大変な好評を博したのです。この「キリンビール」発売に深く関わった外国人が、今回も訪れた、長崎の観光名所「グラバー邸」にその名を残すT.B.グラバーです。グラバーというと、幕末に坂本龍馬や西郷隆盛らと幕府転覆に奔走した商人としても知られています。しかし維新後にも、炭坑の開発や三菱の事業拡大など、日本産業界の発展に大きな足跡を残しました。そして、長年にわたる日本滞在の中で、日本人がビールを好むことも、日本の風土や生活文化にはきっとビールが普及する素地があると信じ、ビール産業界に参入を試みます。そして、ラベルの「麒麟」は、グラバーの提案により採用され、現在の「キリンラガービール」のラベルの原型となるデザインが完成しています。
「この彫刻(こま犬)は今のキリンビール社のラベルのもとになったものであり、また、ラベルの「麒麟」に太い口ひげが描かれているのは、キリンビール社の前身であるジャパン・ブルワリー・カンパニーの社長を勤めたグラバーの口ひげをもとにしたといわれている。」(グラバー亭のなかにある案内板から)