今週の日曜日、散歩をしていたら、「くちなしの花」を見つけました。時期的には、少し遅い感じでしたが、それでも、まだきれいに咲いています。とっさに思い浮かべるのは、「水木かおる作詞、遠藤実作曲で、渡哲也が歌った「くちなしの花」です。「いまでは指輪も 回るほど やせてやつれた お前のうわさ くちなしの花の 花のかおりが 旅路のはてまで ついてくる くちなしの白い花 おまえのような 花だった」という一番の歌詞は、くちなしの花のにおいが旅路の果てまでついてくるほど強い、印象深いにおいということがわかります。また、「おまえのような花」というのは、この花は、純白の美しい花で、いかにも清純な感じのする花で、花言葉も「清潔・純潔」となっているところから、そんな彼女なのでしょう。あと、この花言葉に「私は、幸せもの」という意味もありますが、この歌は、彼と別れ、2番の歌詞のように「雨の別れが 今でも心を しめつける」とか、3番の歌詞の「小さな幸せ それさえも 捨ててしまった 自分の手から」という彼女は、どう考えても「私は、幸せもの」という感じはしませんね。という、揚げ足取りは別として、キャサリン・ヘップバーン主演の映画「旅情」では、愛の花ともてはやされ、有名なラストシーンで、くちなしの花が出てきます。また、この花は、「沈丁花」「金木犀」と並ぶよいにおいの花として有名です。しかし、よいにおいというのは、どうも芳香剤のイメージですね。
「くちなし」は、アカネ科クチナシ属ですが、なんと、同じアカネ科に有用植物としてコーヒーノキがあるのは、驚きですね。この「くちなし」という名前の由来には、いろいろな説がありますが、一番有名なのは、くちなしの実は熟しても他の果実の様にはじけないことから、「熟しても口を開かない」くちなしという説です。また、漢名の梔子の“梔”は、口が小さく楕円形をした一種の酒壺のことで、実の形が似ているところから梔子と呼ぶようになりました。この「くちなし」は、亜熱帯系の植物で、わが国では静岡以西、四国、九州に自生します。学名は「ガ-デニア・ジャスミノイデス」といいますが、ジャスミンに似た香りのただよう意味が含まれているそうで、なんとなく頷けますね。蕾のときは帯緑色ですが、開花すると純白になります。クチナシの実は、おせち料理の「きんとん」になくてはならないものですね。それは、その実の色に関係します。「あかね色(茜色)」は、アカネ科の多年草つる草の根からとれる赤い染料の色のことです。源氏物語の色の世界でも、黄系は、「山吹」「梔子」「黄」の3色をいいます。「黄」は、カリヤスの葉を使い、「山吹」は、アカネやベニバナを混ぜて染めました。くちなしの実を乾燥させたものは、食品を黄色に染める着色料として、栗やさつまいものシロップ煮、きんとん、たくあん漬け、麺類、お菓子などに使われます。江戸時代の料理本には、くちなしで色付けしたごはんにだし汁をかける「山梔子飯(くちなしめし)」が登場しています。現在も、ごはんやおこわなどを黄色く色付けした郷土料理も見られるそうです。くちなし酒は、疲労回復、強壮、健胃などのほか、精神安静、安眠、美容などにも効果があるといわれています。また、薬用としては解熱に、打撲撚挫時には痛みをとるほか、淨血にも益ありとされてきました。小粒の果実は山梔子といい、消炎、鎮静、止血にも使用されました。昔から、身近にある花や実を、調理や、薬用に使ったのですね。