江戸しぐさ

 今、東京で地下鉄に乗ると、駅にこんな看板が掲げられています。
『大都市「江戸」にあったとされる、互いを思いやり、共に気持ちよく生活するための知恵「江戸しぐさ」「何事にもイキである」ことを美徳とした江戸っ子は、公共マナーもルールとして守るだけではなく、都会人ならではの「洗練されたしぐさ」として誇りを持ち、自然に振舞っていました。イキな思いやり「江戸しぐさ」私たち東京っ子にもふさわしい「しぐさ」だと思います。』
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 この看板には、この「江戸しぐさ」のなかで3つの例が絵といっしょに紹介されています。そのひとつは、今の梅雨のころには、その心遣いが必要だと痛感することがあります。それは、「傘かしげ」です。傘をさして歩いていて、人とすれ違うときに、雨のしずくがかからないように、傘をかしげあって気配りして通り過ぎることをいいます。それを、さっと何気なくやることに「イキ」を感じますね。人が密集して住んでいた江戸では、自然とそんな他人への思いやりがあったのでしょう。同じようにすれ違うときの思いやりに「肩引き」というのがあります。これは、狭い道ですれ違うとき、肩を引き合って胸と胸を合わせる格好で通り過ぎるしぐさのことをいいます。私の園で、給食のときに3,4,5歳児がいっしょに食べています。そのときの1台のテーブルには、6人が座ります。一人ひとりトレーに乗せて席まで運ぶのですが、6人分を机に乗せるのにはお互いに寄せ合わないとはみ出てしまうものが出てしまいます。子どもたちは、さりげなく、自分のトレーを寄せながら他人が乗せる分の空きを作ります。江戸時代、乗合い船で腰の両側にこぶしをついて軽く腰を浮かせ、少しずつ幅を詰めながら1人分の空間を作るしぐさのことを「こぶし腰浮かせ」といいます。看板に紹介されている「蟹歩き」も、狭い路地で人とすれ違うときに互いに通りやすくするためにからだを横にすることです。少子社会では、子どもたちは、そんな体験をすることは少なくなったでしょうね。
もうひとつ紹介されているのは、「うかつあやまり」というものです。これは、人ごみで人に足を踏まれたとき、踏んだ方はもちろん、踏まれた方も、「こちらこそ、うっかりしていました」とさっと謝ることです。ぼんやりしていて踏まれた側にも責任があるという、思いやりの心 です。今は、両方とも謝らないかもしれません。さりげない言葉は、言ったから損するものでもないので、それだけで和むのであればそんな言葉を交わせばいいのにと思います。このほかにもいろいろあるようです。きのうの「がばいばあちゃん」の語録ではありませんが、この「江戸しぐさ」 には、大事なものをみんなの共有物と考え、相手を尊重し思いやる心の江戸の賢者の知恵が詰まっています。それは、今の時代でも役に立ちます。江戸しぐさには21世紀を快適に生きるためのヒントが詰まっています。また、わが身を振り返ることもあります。たとえば、「忙しい、忙しいと言うな」は、忙しいとは心を亡くすことです。決して自慢できることではないのです。 「自分と違う意見をないがしろにするな」は、意見が違うからこそじぶんにとって参考になるのです。「はい、はいと二度返事をするな」は、一度目は了解したということですが、二度目の「はい」は迷惑だという気持ちが現れています。「三脱の教え」とは、初対面の人に年齢、職業、地位を聞くなということです。聞くということは、それによって付き合い方を変えるということです。

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