先日、掛川に行ったときに、掛川城のほかに行くところを探しているときに、とてもきれいなポスターが目に付きました。それは、「加茂花菖蒲園」というところでした。

そういえば、梅雨の今のころ、アジサイとショウブがきれいだろうなと思いました。しかし、考えてみると、少しおかしいことに気が付きました。というのは、「ショウブ」といえば、「菖蒲湯」です。5月5日の子どもの日を「端午の節句」といいますが、「菖蒲(ショウブ)の節句」とも呼ばれています。それは、この時期に花を咲かせる菖蒲の長い葉は、強い香気があるので、この香りの強さが不浄を払い、邪気を遠ざけてくれるといわれているので、また「菖蒲(ショウブ)」は、「勝負」や「尚武」に通じることから、江戸時代から男の子の出生を祝って、端午の節句に菖蒲湯に入ることが習慣になったといわれています。ということで、「ショウブ」が今頃咲くというのは、変です。実は、「加茂花菖蒲園」という場所のきるところが違っているのです。この場所は、「加茂花 菖蒲園」ではなく、「加茂 花菖蒲園」なのです。ということは、今の時期に咲いているのは、「ハナショウブ」であって、「ショウブ」とはまったく違う品種です。霊験ありとされる節句のときのショウブは、サトイモ科です。ハナショウブは、アヤメ科です。私たち日本人は、二千年を超える昔から、桜を見て野に下り、耕して籾を播き、ハナショウブの開花で田植えの時期を知って農作に励むといった、鋭い季節感を養ってきました。

そういえば、同じアヤメ科といえば、アヤメ、ハナショウブ、カキツバタが有名で、6月の梅雨時の花としてはなくてはならないもので、古く万葉の頃から親しまれてきました。しかし、「いずれがあやめかきつばた」と言われるように、見分けは難しいですね。見分け方は、一番簡単なのは花を見ます。花弁の基部を見ると、アヤメは網目になっています。山野に生えたり、水とは関係ないところ(畑など)にも植えられます。和名は文目といいます。アヤメという名前は、外花被の基部に稜になった目があること,または葉が並列し綾をなすからともいわれています。カキツバタの花は白に黄班が入り、水湿地に群生します。和名は「書き付け花」から「カキツバタ」になったといわれています。ハナショウブは初夏に、水辺など湿った場所に群生します。単にショウブという場合は,たいていハナショウブ(花菖蒲)のことです。花は大きく,色は紫(青紫,赤紫)や白が多いようです。日本各地の「アヤメ園」とか「菖蒲園」というのは殆ど「ハナショウブ園」だと考えられます。
ここ「加茂花菖蒲園」は、江戸時代中期に建てられた庄屋屋敷「加茂荘」の門前に広がる園です。原野谷川流域の山すそに、残る庄屋の長屋門や土蔵と、花ショウブの映りは絶妙です。紫、藍、白、黄、紅などカラフルな色彩に加え、絞り、ぼかし、筋入りなど多彩でした。園の規模はおよそ1ヘクタールあり、1500品種、100万株が保存栽培されています。ここは、とても手入れも良く、花がきれいに咲き誇っているだけでなく、この大きな花菖蒲園の背景には、歴史ある庄屋屋敷が立っており、その後ろにはどっしりとした杉の森が控え、昔懐かしい山里の雰囲気が、純日本的な別天地を演出しています。少し雨が降っていましたが、それがまた、日本的な情緒をかもし出しています。つくづく、日本って、美しいなあと思う瞬間でした。