ぼくは おうさま

 先日の5月21日に、童話作家の寺村輝夫さん(てらむらてるお)が亡くなりました。寺村さんは、毎日出版文化賞を受賞した「ぼくは王さま」や、「おしゃべりなたまごやき」を始めとする王さまシリーズなどで親しまれています。寺村さんは、早稲田大学在学中に坪田譲治に師事し、「びわの実学校」の同人となります。私が好きな児童文学は、この「びわの実学校」に連載されたものが多いですし、その同人に好みの人が多い気がします。また、寺村さんの作品では、他に「ミリ子は負けない」「寺村輝夫のおばけ話・とんち話」や「こまったさん」シリーズなどの著書が多数あります。このなかの「ミリ子は負けない」は、女の子が主人公ですが、16ミリ映画にもなっていますので、各地の公民館などから貸し出しができます。集団生活の大切さを感じとっていく姿をほほえましく描いています。もう一度、少子社会での集団の大切さを子どもたちに伝えるのにはいいかもしれません。
それらの作品のなかでは、私は「王さまシリーズ」に、特別な思い出があります。それは、私が教員のころ、学芸会で1年生に何をやらせようと相談した結果、私が大好きだった「王さまシリーズ」を脚色して演じさせることにしました。そして、その劇中歌として、場面ごとに歌う曲を作詞作曲しました。歌詞は、こんなのです。
 「王さまの好きなのは、“おひめさま!”それから それから なんですか?“たまごやき!”こころのやさしい 王さまだ。 けれども きらいなものもある。“となりの国とのせんそう”と なかでも きらいなものは“べんきょう!” いつも大臣に “コラッ!”おこられています “べんきょう しなさい!” ほんとに やんなっちゃう ほんとに やんなっちゃう」
 たぶん、王さまシリーズを読んだことがある人は、この歌詞の意味が良く分かると思います。というのは、そのシリーズを私はほとんど読んだからです。学芸会で、その劇をする直前に、教室で子どもたちを待たせていたときです。クラスの子のなかで、普段落ち着きのない、元気なやんちゃな男の子がいました。その子は、待っている間に教室内で走り回り、他の子とぶつかって、目の上を切り、血がたくさん出てしまいました。その子は、劇の中で、重要な役である「大臣」だったので、大騒ぎでした。その子が今、医者になっています。大学に入るときに、私が、その子が医学部に入学すると聞いたときに、急いで、臨床医か、研究医か聞きました。あんな落ち着きのない子が、臨床医にでもなったら、体内にはさみでも忘れないか心配だったのです。でも、今は、臨床医になって活躍しています。でも、なんとなく、私が病気になったときに、手術を頼むのは心配な気がします。教え子は、私の中ではいつまでも、やんちゃな子どもです。もう立派に、子どももいるお父さんになっていても、いつまでもかわいく、また心配なものですね。そして、今の園が開園1年目のときの年長さんの劇が、やはり、「おうさまシリーズ」でした。もちろん、劇中歌を、何とか思い出してその歌を歌いました。
 わが子も、小さいころ、この「おうさまシリーズ」が大好きで、そのなかの何話かを、自分で読んで、それをカセットテープに吹き込んでいました。なぜ吹き込んだのでしょうね。一人で、部屋に閉じこもって吹き込んでいる姿が、今でも思い出されます。

ぼくは おうさま” への4件のコメント

  1. 「王さま」シリーズは、私も真ん中の妹も大好きです。
    しかも息子も大好きです。
    うちにあるのが、3?4話入った文庫本なので、毎日毎日寝る前に、その文庫本を読まされています。
    1話ずつの絵本ならば、3冊読んであげればいいのですが、文庫本で2冊だと、絵本6?7冊分です。
    息子は自分が我が家の「おうさま」なので、共感できるのか、文庫本2冊分くらいは平気で集中して聞いています。ちなみにまだ3歳です。3歳にとっては長い文章なのですが、それでも面白いらしく途中で止めようとすると怒ります。
    恐るべし「おうさま」シリーズです・・・。
    数日前のブログに、朗読が脳の老化防止になると書かれてあったので、がんばって読んであげています。
    ちなみに私は「しゃぼんだま」のお話が好きです。

  2. 王さまシリーズからの思い出の話、なんだか心が温かくなる内容でした。学芸会で大臣役だった子が大きなり、医者の道へ進んでいったのですね。「私の中ではいつまでも、やんちゃな子です〜いつまでもかわいく、また心配なものですね」という言葉に、なんともいえない感情がうまれ、それが体の中をぐるぐる回って、私の気持ちを優しく撫でてくれているようであります。私達が一緒に過している子どもの姿と大人になった時のその子の姿は同じ人に間違いはないのですが、もしかすると別人でもあるかのような印象を受けるのかもしれません。私も自分の子どもの頃の写真を見て、「これがこうなったのか」と素直に驚くことがあります。それがとても不思議に思えることがあります。

  3. 子どもがいる家庭には、いつも真剣で、どこか抜けていて、ユーモアたっぷりの王様がすぐそこに感じるものなのでしょうね。王様シリーズは、1,2冊しか読んだことがありません。ぜひ、他も読んでみようと思います。また、教え子は、いつまでたってもその当時の教え子像が残っているものなのですね。卒園した子どもたちを思い浮かべてみると、やはり、幼い頃のあどけない姿を思い出しますね。不思議なものです。その子どもたちにとっては、どんな記憶があるのでしょうね。大きく見えた先生が、今は小さく見えるなどと思うのでしょうか。また、覚えていないという子も多いのかもしれませんね。

  4. 1年生のみんな、学芸会で「王様シリーズ」を演じて、さぞかし楽しかったでしょうね。そして、本番前にけがをしてしまった「大臣」役のお子さん、大人になって「医者」になったのですね。そのお子さんは医者になって本当に活躍していますね。直接その方は存じ上げませんが、藤森先生のお話や、なんとそのお母様との出会いによって、その仕事ぶり、想像がつきます。それにしても、「普段落ち着きのない、元気なやんちゃな男の子」が大きくなって「臨床医」。落ち着いて患者さんに応対しているのでしょうが、おそらく小学生の時、その教え子さんは人生の中で「落ち着きのない」分の全てを発揮したのでしょう。だから、大人になって医者になられて、落ち着いた対応ができているのでしょうね。お伺いしたお話からそのことがわかります。息子さんの行為もおもしろいですね。しかし、私も自分の朗読を録音した経験があります。それは、文字を読めない祖母に小説や童話を聴かせるためでした。懐かしいことを思い出しました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です