人は、自分に関係すること、自分の身の回りのことに対する情報を得ようとしています。今は、情報時代といわれ、多くの情報が、さまざまなメディアを通して流れてきます。しかし、その情報量が多いだけに、知らず知らずのうちに、自分の都合で選択しています。一緒にテレビの同じ番組を見ていても、後で話してみると、まったく違うところを見ていることが多くあります。4月13日の新聞に、こんなニュースが流れました。「運転免許:聴覚障害者もOKに 08年度制限撤廃へ」本当に申し訳ないのですが、今まで、聴力障害者には、運転免許に制限があったとは知りませんでした。現在は、聴覚障害者の自動車運転免許に一定以上(10メートルの距離で乗用車のクラクション音程度(90デシベル)が聞き取れることが合格条件)の聴力が必要とされているそうです。緊急車両のサイレンやクラクションを聞き取れないと安全運転に支障があるという判断だからだそうです。しかし、先進国の多くではこうした制限はありません。というのも、クラクションやサイレンが聞こえない聴力障害者が乗用車で車線変更をしたり、前進、後退する際に安全が確保されるかなどについて試験運転を重ねた結果、運転席から隣接車線も目視できる広角バックミラーを活用し、慎重に運転を行えば、安全に運転できることを確認したからです。しかも、事故原因として、聴力と関係のない目視確認の不十分さやあせり、スピードの出し過ぎなどが多かったそうです。
多くの障害者や病者は、健常者以上に、自分で運転できることを必要としています。そして、「その人がどのようにしたら問題なく運転できるか」について適切な支援を受けられるかどうかは、障害者の社会参加にとって大きな要素なのです。しかも、就職するとき、運転免許所持を前提にしているものが多く、免許証を持っていないと、難しくなります。たとえば、自動車運転免許は、フォークリフトなどの免許講習受講資格になっており、建設機械など各種車輛の運転免許ともリンクしているため、技能を新たに獲得する上で必須のものです。しかし、今回認められることになった聴力障害者だけでなく、私は、運転免許試験の問題が、文章として理解しにくいことは、知的障害やLDなど文字についての理解が困難のある人等にとっては特に大きな壁になっています。あの短い時間内に、引っ掛け問題を数多く解かなければならないからです。そこで、記述の改善、実施方法として口頭によるテストの導入、聴覚障害者ならば試験時の字幕表示や手話通訳など、情報のバリアをなくす一環としても更に取り組む必要があります。なお、口頭によるテストは外国に例があり、国によっては、その国の標準言語が得意でない人にも配慮しています。「新・障害者の十年推進会議」が2000年に行った海外調査(回答国は、アメリカ、イギリス、オーストラリア、オランダ、カナダ、スウェーデン、ドイツ)によれば、個人の自家用車運転について、障害や病気を理由にした障壁はない、という回答が大部分です。逆に、もし不合理な扱いをすれば差別として裁かれる国が、多くを占めています。文字の読み書きが苦手な人に対して、アメリカでは、試験時間を増やしてくれたり、イギリスでは、ヒアリングでやってくれたりするそうです。事故は、障害や病気の有無にかかわらず絶対に起きないとはいえません。もしも事故を起こしてしまったときは、客観的な事実関係の解明の上で、ドライバーとして責任をとるのはいうまでもないことです。ただ、聴力障害者が免許を取れるようになったということだけではなく、どのような試験をするかも考えてもらいたいものです。