PISA

 皆さんは、こんな問題が解けますか?
「高度に工業化のすすんだ経済のもとでは、インフレの影響がもっとも深刻なのは、次の誰でしょうか。」「ア、基本給が生活費指数により決まる人」「イ、固定した収入で生活している人」「ウ、強い労働組合に所属する工場労働者」「エ、大きな会社の重役秘書」「オ、弁護士や医師のような専門職の人」
この問題は、ヘルシンキ大で講師を務めたこともある中嶋博早大名誉教授が翻訳した「人生への準備は万全?」の中にあるPISAのための予備調査の出題問題です。このPISAは、何度も話題に出ています。国内では「OECD生徒の学習到達度調査」と呼ばれるもので、実施母体は、OECD(経済協力開発機構)です。2000年の調査のときの序文には、この調査の趣旨が書かれています。「若い成人が未来の調整に対処すべく、果たして十分に準備されているだろうか。彼らは分析し、推論し、自分の考えを意思疎通できるであろうか。彼らは生涯を通しての学習を継続できる能力を身につけているだろうか。父母、生徒、広く国民、そして教育システムを運用する人々は、こうした疑問に対して回答を知っておく必要がある。」ここに書かれているように、これからの時代に必要な力は何か、そのためにどのようにしたら良いかを考え始めているのです。そして、そのこれから必要な力として、「問題解決」「批判的思考」「コミュニケーション能力」「自信」としています。ですから、問題も少しずつそのような力を問うような問題を試行しています。しかし、今の段階での問題は、まだまだ認知的なものが多く、これから非認知的なものを進めようとしています。そのような問題傾向になるにしたがって、日本の子どもの点数は、下がっていくと思われています。中嶋博氏は、「日本や韓国が高得点をあげていた従来の国際調査は,詰め込まれた知識量をみるものだった。それを見直して生涯にわたって学習する能力を身につけているかどうかをみるための指標として始まったのがPISAである」と述べており、「そうなっていくと、日本は、特に社会規範の意識とかそういうことを含めるとまだまだ30番くらいまで下がるのではないか。」と言っています。2003年に行われた調査で、日本の子どもが読解力において2000年8位から14位に下がったことで、中山文部科学相は、国語などの基本教科を重視する検討課題を示し、「脱ゆとり」に大きくかじを切りました。しかし、今研究が進められている2006年に行われる調査結果は、どうなるでしょうか。PISAの調査結果は、ただ、どの国が高かったとか、その国を見習えば良いとかいうものではなく、これからの教育をどうしていくべきかという処方箋が書かれているのです。ですから、その結果を正しく分析しなければならないと思います。「さあ、高かったフィンランドに視察に行こう!」というだけでは、危険だと思います。もう一度、日本における教育、そして、基本の幼児教育を見直す必要があるのです。日本や韓国が高得点をあげていた従来の国際調査は、詰め込まれた知識量をみるものでした。ですから、暗記や暗唱が中心の教育に戻したり、授業時間を増やしたりする方法では、日本の教育が抱えている課題は解決できません。世界中が将来を担う子どもたちの力を育てようとしています。日本でも呼びかけは一緒ですが、どうも形が違ってきているような気がします。