プライバシー

 最近、また子どもに関係する痛ましい事件が起きました。その中で、プライバシーを重視するマンションのつくりということが出てきます。日本の家屋は、あまり個人のプライバシーは重視されませんでした。家の中は、ふすま1枚で隣と隔て、個室は持たず、また、建物も長屋などでは、壁1枚で隣の家と仕切られ、声は筒抜けでした。それが、現代の日本の戸建住宅の間取りは、大体、1階には居間、食堂、台所と和室があり、2階に数室の個室があるという間取りが一般的です。1階の居間を除くと、住居内のそれぞれの部屋は独立性が尊重され、他の部屋との関係が遮断されているのが特徴です。「日本の住居の間取りも、欧米並になった」ようです。
 「1階は家族とのコミュニケーションを大切にした間取り。台所は、家族との会話を楽しみながら、または子供たちの様子を見ながら家事ができる対面式のキッチンにし、家族が集うLDとの一体感を大切にした。LDの前面に広くウッドデッキを設けて明るさと広がりをもたせた。2階は家族それぞれの個室を設けてプライバシーを重視した間取り。個室は、家族の寝室も兼ねる部屋なので、地震対策の面からも余計な家具は置きたくない。各部屋に充実した収納スペースを設けて、家具を置かなくても済むようにしている。」これは、ある住宅メーカーのチラシ広告の一文です。そして、そこに平面図が書かれています。それを見ると、玄関に入ると、すぐ左手に2階に行く階段があります。そして、反対側にLD、すなわち、リビングと、キッチンがあります。このチラシのように、ここで家族とのコミュニケーションをとるのでしょう。そして、母親は、台所に立ちながら、家族と会話をし、子どもの様子を見ると書かれています。しかし、たぶん、子どもたちは帰ってくると、すぐに2階の自分の部屋に直接入ってしまいます。そして、下で食事の準備ができたと声がかかり、下へ行って食事をして、またすぐに自分の部屋に入ってしまうでしょう。最近聞く話では、自分の部屋に食事を運ばせる子も小学生の頃からいるようです。収納にしても各部屋にあるので、取りに行く必要はありません。
 しかし、こうした最近の日本住居の傾向に対して、進歩的な建築家から疑問が投げかけられています。「それぞれの部屋が閉鎖化し過ぎている」とか、「階段を家の奥にして、居間とか、台所を通って2階に上がるようにしたほうがいい」という意見です。今の子どもの生活環境は、時間的にも、空間的にも、精神的にも、いろいろな人とかかわる機会が失われています。間取りだけでなく、街のつくりも、できるだけ、人とかかわらなくても済むようにつくられています。その中でも特に、地域の人とふれ合う機会は、どんどん失われています。地域と触れ合う場所でもあった「縁側」がなくなり、地域で情報交換していた「井戸端」がなくなりました。かつて、子どもたちは、親と一緒に、また、子ども集団で、様々な地域の人と触れ合うことで、いろいろなことを学びました。危険な時代になったからこそ、もう一度、プライバシー確保というという観点からより、みんなで子どもを見守るという、日本社会特有の地域のあり方、家族、住居のあり方を見直す時期かもしれませんね。