
私の園では、2001年度に「グッドデザイン賞」を受賞しています。部門は、「新領域部門」で、「人々の関係性のデザイン」ということで受賞しました。この2次審査は、10分間のプレゼンと、10分間の質問です。まず、審査委員長から、このように尋ねられました。「なぜ、このデザイン賞に応募したのか?」私は、このように答えました。「かつて、デザインというものは、付加価値だった。たとえば、コップにしても、飲めればよい。その上で、デザインが良ければ、より良いコップであるというように。しかし、今は、コップのデザインというものは、コップと飲み手の関係をどのように構築するかではないか。その関係性の良さが、良いデザインではないだろうか。ということは、園の仕事は、いかに、子どもと子どもの関係、子どもと大人の関係、大人と大人の関係、園と地域の関係を作っていくか、それは、どんなデザインをしていくということかだと思う。」「そして、その関係性の提案として、今までの母性の保育(やってあげる)から、父性の保育(見守る)という観点への変化と、それぞれの違いを認め合い、それらがともに生きていく社会「共異体」を作っていくことではないか。」このような内容のプレゼンテーションを10分間した後、質問です。たとえば、「この事業は、永続的なものですか?」と聞かれたときは、「いいえ。それは、次第に成熟していく事業です。」という具合です。そのときに、審査員の質の高さを感じました。というのも、私の伝えたかったことを理解してくれ、プレゼンが終わったときに、みんなで、拍手をしてくれました。(そのあとに、金賞にノミネートされたことを知りました。)このときのキーワードに、昨日の日曜日に出会いました。六本木に「ドイツ・デザイン展」(3月12日まで)と「東京ベルリン・ベルリン東京展」(5月7日まで)を見に行ったときです。その展示の中に「デザインは、ものと人との関係性を作ることである。」というコメントがありました。私は、最近ドイツによく行きますが、今回のドイツ・デザインの展示を見て、昔から私が好きなデザインは、ドイツのものが多いことに気がつきました。「クールなフォルムと合理的な機能性」が好きなようです。関係性という相互作用の中に、徹底して無駄をなくし、一見一方的にも思えるデザインが、使い手にとってもその目的を明確にし、心地よいものにしている気がします。
会場で、もうひとつの今の私のテーマである言葉に出会いました。「インクルーシブデザイン」です。会場に置いてあったチラシ「人間の可能性を広げるデザインの未来」というフォーラムの案内の中に、「超高齢社会を迎え、多様な個性、多様なニーズを持ったユーザーに使いやすいデザインのあり方が問われています。多様な存在が多様なままに、共にあることを幸福と感じられる社会「インクルーシブ・ソサエティ」を作るために、デザインにはどのような役割があるでしょうか。」と書かれています。まさに、このインクルーシブ・ソサエティとは、私が提案する「共異体」です。ただ、この中で使われている言葉としては、高齢者を対象に、ユニバーサルデザインのことを、イギリスではインクルーシブデザインと言うようです。私は、高齢者に限らず、すべての年齢、人種、障害、貧困、性によって、中でも個性の成長や人格の発達によって、また、あらゆる価値観においてもインクルーシブな社会を作っていく必要があると思います。デザインの世界でも、流れは同じですね。