東風

 今日は、外に散歩に出てみると、大変でした。非常に風が強かったのです。(電車も止まったほどです)「春1番」は、もうすでに吹いていますので、今日の風はそれではありません。風は前から吹いてきて、目に入ります。東に向かって歩いているので、たぶん「ひがしかぜ」です。このように、東の方から吹いてくる風のことを、「東風」と書いて、「こち」といいますね。日本では 春は東北風、夏は東南風、秋は西南風、冬は西北風が吹くといわれます。風は、それが吹く季節によって、様々な吹き方があり、それぞれに名前がついています。やさしく、まろやかに包み込むように吹く風のイメージは、「春風」ですね。「台風」は、恐ろしいイメージですし、「木枯らし」は、なんだか寒々しいです。そして、この東風は単独で使うよりも季節の動植物を伴って使われる場合が多いようです。「雲雀東風」「鰆東風」「梅東風」「桜東風」などです。例えば「雲雀東風」というと、雲雀が天で一日中さえずっているような天候の時に吹く風のことです。鰆(さわら)は、春を代表する魚とイメージが重なります。ずいぶんと、東風は幅の広い意味を持った言葉のようです。ですから、そのほかにも異名がたくさんあり、正東風(まごち)、強東風、朝東風、夕東風などとも言うようです。また、「風吹けば雨」または「風が東から西に吹けば雨」ということわざは福島県その他の地方でいわれているように、この風が吹いた後は、雨が降るようです。今日の天気予報でも、「夕方から雨」でした。それは、雨の降る主な原因は低気圧で、その低気圧は時計の針と反対方向の空気の大きな渦巻であるために、低気圧が南の太平洋上から、または西の方から近づいて来る時には、その前面では東寄りの風が吹くこととなり、東風が吹くような時にはやがて低気圧の温暖前線により雨が降ることとなるのです。「こち」というと、すぐに思い出す歌があります。「東風吹かば 匂ひおこせよ梅の花 主なしとて春を忘るな」(拾遺集)です。この歌は、菅原道真が、京より出発したのは、梅の季節でした。庭前の梅も真っ盛りでした。そこで、こんな歌を歌ったのです。もうひとつ、夏目漱石もこんな歌を歌っています。「東風吹くや 山一ぱいの 雲の影」です。春がもうそこまで来ているという感じがしますね。
 私は、もうひとつ、「東風」というと、思い出す歌があります。むかし、夜、ラジオで、放送していた番組の主題歌です。Djが荒木一郎の「空に星があるように」です。受験時代に、よく聞いたものでした。その番組の始まりに流れる曲の歌詞は、受験生の心に響いたものでした。「空に星があるように 浜辺に砂があるように 僕の心に たった一つの 小さな夢がありました。風が東に吹くように 川が流れて行くように 時の流れに たった一つの 小さな夢は消えました。淋しく淋しく星を見つめ 一人で一人で涙にぬれる 何もかも すべては 終わってしまったけれど 何もかも まわりは 消えてしまったけれど 春に小雨が降るように 秋に枯れ葉が散るように それはだれにもあるような ただの季節の 変わり目の頃」この歌詞の中の「風が東に吹くように」というフレーズです。でも、それは、ただ、誰にもあるような、季節の変わり目であるということです。
 今日の強い風も、次に来る暖かいやさしい春への季節の変わり目なのです。そう思うと、風あたりが強い風でも、励まされている感じがしますね。