自発性

04年12月に公表された国際学力調査の結果のなかで、学習や職業に対して無気力な子どもが増えていることが指摘されています。確かに前回の調査でも、日本の子どもは、学ぶ意欲は、世界の中で最低でした。私は、少しぐらい学力が下がっても、そんなことは、本来の教育を求めていく過程では、長い目で子どもたちに真の力をつけるためには、たいしたことはないと思っています。しかし、意欲がないということは、大きな問題です。この「意欲」とか、「自主的」とか、「自発性」というものは、教えてできるものではありません。教えたり、やらせたりしたら、それは「強制」とか、「他発性」になってしまうからです。自発性を育てるためには、0歳児からの発達をきちんと捉えなければなりません。子どもは、乳児の頃に大人に保護され、養育される過程でその十分な相互作用の中で、人への信頼感と自己主体性を形成していきます。そして、愛情豊かな大人から愛され、守られ、信頼されることによって、情緒的に安定し、大人の期待に自らこたえようという気持ちが芽生えてきます。この主体的な活動が、発達するにつれて自発的な興味や関心を示して事物に働きかけたり、人とかかわろうとする気持ちになっていくのです。こうして、自分が主体となることで、自己の能動性に自信を持ち、言葉や思考力、自己統制力を発達させていくのです。その結果として、新たな態度や知識、能力をつけていこうとするのです。自主性だけでなく、道徳性も同様にして、きちんとした発達を遂げていく過程で生まれてくるものです。決して、教え込んだり、しつけと称した強制からは育っていきません。発達から育ってきた自主性は、学校教育の中で、学問に向けられていきます。それが、将来、働く意欲につながっていきます。幼児期での自主性の芽生えをきちんと保障しておけば、学問をするうえでは、自主性は、逆にその責任を自身に求めることによって、より強化されていきます。
 数学者のピーター・フランクル氏が、学生時代の思い出を、語っていました。
「ハンガリーでは、学校の授業は毎日昼過ぎまで。給食も選択性で、家で食べたい人は帰宅してもいい。学校で過ごす時間は日本よりずっと短いのですが、毎日口頭試問があるので、家で自主的に勉強します。日本では、多くの子どもたちは定期試験の直前以外では、家で本格的に勉強しません。でもハンガリーではそれでは間に合わない。毎日、授業の始めに先生が、名簿から3人指名して、前日の授業の内容に関する質問を出します。生徒は質問に対する答えを頭の中でまとめ、教壇の横からみんなに向かって2,3分かけて説明し、それを先生が採点するのです。これは、二つの面でとても効果的です。一つは、家で毎日自主的に勉強するようになること。もう一つは、自分の考えをうまく言葉にする訓練になることです。日本人の頭の中にはたくさんの知識が入っていますが、それを理路整然と並べて人に伝えることがとても苦手です。自分の考えを人に伝える力が付けば、人生のあらゆる場面で役に立ちますし、外国語力も飛躍的に伸びて行きます。」
 ずいぶんと厳しいような気がします。しかし、やはり勉強というものは、厳しいものであるのかもしれません。それに耐えることができるのは、きちんとした乳幼児期での大人とのかかわりにあるのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">