育てるとは

 よく、保育の基本を「養護と教育」ということがあります。最近、私は、あまりこの言葉が好きではありません。というのは、養護は、「養う」ということであり、「護る」ということです。どちらも、一方的な大人からの行為としての言葉です。もちろん、養護の一つの意味である「生命の保持」には、大人からの働きかけが主ですが、保育の中では、この観点からだけでない気がします。英語で言う「ケア」には、「見守る」という意味が含まれているといいます。「見守る」という観点は、あくまでの主体は子どもです。また、「護」という字は、「監視する」という意味合いも含まれるからです。子どもを主体に置いた言葉としては、たとえば、「受容」などはいいですね。子どもがやることを、見守っている感じがあります。「教育」も、「教える」と「育てる」というと、どちらも、大人からの行為です。それに比べて、英語のエデュケーションには、引き出すという意味があり、子どもが持っているものを引き出すことというがエディケーションであるということになります。やはり、子どもが主体の気がします。「育」についても、「育てる」と読むよりも、「育み」「育つ」と読んだほうがいい気がします。まず、育む(はぐくむ)という音は、「羽包む」の意であり、親鳥がひな鳥を羽で覆い包むということから、まず、子どもを大切に世話をするということが大事であることを意味します。そうすることによって、子どもは、育っていくのです。育つ(そだつ)は、巣立つからきています。大切にされることで、自立をしていくという意味です。育つという言葉には、やはり、子ども主体の意味が含まれます。
動物占いで有名な弦本將裕氏がこんなことを言っています。同じようなことを言っているので、びっくりしました。先方でも、同様のようで、私の本を読んでいてくれているようですし、今度会いたいといってきているので、楽しみです。
「個性心理学では辞書にない言葉の使い方をしますが、「そだてる」というのは、「素立てる」と書きます。学校で習う「そだてる」は「育てる」ですが、これは養うという意味も入っているのです。養われている者からしたら、ご飯を食べさせてもらっているから逆らえません。これが今までの、上から下へものを言う教育だったのです。これからは、素立てる、素(個性)を立てる、教育でなければならないのです。今までこの素を知る術がなかったこともあったでしょう。素がわからないから、種がわからないのですから立つわけがない。いろいろな種がありますが、花屋さんに買いに行くと、「いつ蒔きなさい」「お水はいつあげなさい」「いつ咲きますよ」と袋に書いてあります。種がわかっているから育て方がわかるのです。人間だけは、生まれたときには何も書いてありません。オギャーと生まれた赤ちゃんの足の裏とかに、「どう育てなさい」とか「いつグレる」とか書いていないでしょう。つまり、種(素)がわからないから立つわけがない。子どもも素・立たない。」
 子どもの個性を知ることは、それを認めることに通じます。そのために、子どもの理解と予測がなければなりません。それが、親としての愛情です。また、保育者としての専門性です。子どもがもっているものを引き出すためには、子どもに何かをしよう、してあげようとする前に、まず、子どもを知ろうとする努力をしないといけないでしょう。

育てるとは” への2件のコメント

  1. Careを「養護」とし、Educationを「教育」としてしまう歴史的文化的もう一つの「刷り込み」に気づかされた・・・というか、以前にも藤森先生のご著書や講演でこのことについては話されていたにもかかわらず無意識のうちに、そして無批判のうちに「養護」「教育」を多用している自分に気づき、冷や汗タラタラでした。明治期の訳語の選定及び戦後の翻訳語の決定の背景には大人中心の、すなわち子どもの主体性というものをあまり考慮しない文化社会思潮があるような気がします。今後日本の保育・教育を諸外国に伝えていく際、例えば、英語で伝えなければならないないとき、英語がもつ本来の意味と日本で行なわれている実態が相違する場合、結構ややこしいことになりかねません。「養護」に対して「受容」や「見守り」、「教育」に対しては「はぐぐみ」とか「ひきだし」とか、そうした日本語を用いて日本のプレスクール及びエデュケーションの全世界への発信のための準備を進めなければ、と思いました。先生が仰る「変える勇気を」の奥深さ、根本的な見直しの要請に改めて気づいたところです。ありがとうございました。

  2. 私も思っている保育の専門性を言葉の引用によって、分かりやすく書かれていて、いつものことではありますが、
    大変感激しました。保育者への発信だけではもったいない!
    子をもつお母さん方に是非伝えたい、お便りにさせて頂きたいと思います。

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