仕事

ある町の市長選の演説です。
「前略―このような演説の機会に、「私に投票してください。」という人が多いのですが、しかし、皆様、私はそんなことは言いません。次のような人に投票してください。「この人に信頼できる。この人がこの町の発展を助ける。」と思われる人に。ただ、一つだけ言っておきたいと思います。もし、私が当選したら、できることはすべてやって見せます。そして、この町を発展させたいと思います。(一同拍手)そして言いたいことがもうひとつあります。次のような人に投票しないでください。当選するために、イベントで人にお金を渡したような人です。なぜなら、そんなことをしなくても、よくできる候補が多くいるからです。しかし、賄賂を渡さないとなんともならない人もいるようです。こういうことはよくないと思います。なぜなら、この選挙は自由で、この選挙は平等だからです。」
 この演説は、ドイツで毎年行われている子どもの都市「ミニ・ミュンヘン」での市長選挙で、立候補した14歳の少年の演説です。私が気に入ったフレーズは、「私に投票してください。」とは言わずに、「こんな人に投票してください。」と言った所です。ミニ・ミュンヘンは、8月の夏休み期間3週間だけ誕生する7歳から15歳までの子どもだけが運営する「小さな都市」で、ドイツのミュンヘンでは20年の歴史があります。この都市で市民権を得るためには、まず少しだけ仕事と学習が必要です。市民権を得た後は、自由に自分の好きな仕事を見つけて働くと「ミミュ」という通貨をもらえます。時給すべて5ミミュですが、1ミミュは税金として市役所に納めなければなりません。そして、ミミュを持っていると、映画を見たり、タクシーにも乗れますし、おいしい食事もできます。しかし、働かないとそのお金は手に入りません。コックさん、タクシー運転手、花屋さん、デパートの定員、デザイナー、新聞記者、教員、公務員、議員、市長など仕事はさまざまです。そして、お金が余ったら、銀行に預けたり、土地を買って店を経営します。そのために、銀行ができ、建築家ができ、大工さんがいます。清掃局があり、広告代理店も、テレビ局も、大学もあります。しかし、投資家はありません。どれも、体を動かして、働き、お金を得ます。
 リクルート出身の和田中の藤原さんの授業が新聞に紹介されていました。「よのなか科」という授業です。「お金で買えないものを9個挙げよ。」「ビル・ゲイツは、帝釈天どおりの商店主よりも幸せだろうか。」藤原さんは、今回のホリエモンは最高の教材と言います。「正解のなくなった成熟社会で、極端な価値観を示した。彼は、停止していた人々の思考のスイッチを入れたんです。」と言っています。
 このミニ・ミュンヘンで大人として関わっている人のインタビューで「なぜ、こんなことをするか」という問いに対して、「ここで、子どもたちはいろいろなことを体験できます。しかし、子どもが体験するのは、仕事だけではありません。他の人と接することです。人との付き合いも体験しています。これこそが、一番重要なポイントだと思います。」
 仕事とは、体を使うことのほかに、人との関係をどう作るかの問題が含まれています。ただ、コンピューターの前に座って、画面とだけ接しているような仕事を、最初に、子どもたちには教えるべきではない気がします。

仕事” への5件のコメント

  1. ミニ・ミュンヘンのことをこのブログで知ったときは衝撃を受けました。すぐにDVDを購入し、内容を観てさらに驚きました。その後、似たような取り組みが日本でもいろいろなところで行われるようになり、それがどこまで広がっていくのかは分かりませんが、ここに出てくる市長のような子が登場してきたり、子ども同士が関わりながら小さな社会を形成していく体験が増えてくれば、子どもの仕事観なんかも変わってきそうな気もします。他者と接することや自分たちで考えて成功体験や失敗体験を積み重ねる場の重要性が、もっと多くの人に理解されるようにしていきたいものです。

  2. まさか、14歳の演説だったとは…。驚きですね。この演説だけでも、ミニミュンヘンの面白さがなんだか伝わってきます。調べてみると、日本でも「こどものまち」といった企画が行われている地域もあるのですね。一度見てみたいと思いました。長期的に職業体験をすることで、まさに遊びを通して社会を理解していくのではないでしょうか。また、ミニミュンヘンのサイトに、「子どもにとって、遊ぶことと働くことの違いは全くありません」と書かれていました。なんだか色々考えさせられます。

  3. ミニ・ミュンヘンを知った時には興奮したのを覚えています。とある所でこのミニ・ミュンヘンをヒントにした取り組みをすることを少し前に、現場の方にお聞きしました。どんな取り組みになるのかとても楽しみな自分がいます。「仕事とは人との関係をどう作るか」ということは働きだして染み染み感じるところであります。かつては自分たちの家でも多くの方が出入りしていたという話を様々な所で耳にします。大工さんや、障子屋さん、剪定をする方だけではなく、多くの方が出入りしていたことで、様々な仕事を感じ、その人たちとの関わりを感じていたのかもしれません。就職するまでの時間ばかりが大切に扱われていて、就職した後のことはあまり大切にされていないのも感じます。どちらもバランス良くがいいのかもしれませんね。

  4. 仕事とは「人と接する」ことによって成り立つ、という大原則を子どもの頃から体験できる機会があることはとても良いことですね。ミニミュンヘンの取り組みは以前藤森先生からお伺いし、またこうして、改めて、その取り組み内容をブログから知ると、その意味の大きさに気づかされますね。中学になると職場体験が授業の一環として生徒たちに提供されます。職場を体験する、ということで生徒の将来の職業観形成の一助とすることが目的なのでしょう。しかし、残念なことは、どうやらそれが単発のイベントのように終わってしまうことです。賃金労働する前の中学時代にこそ、仕事とはどういうことなのか学ぶ機会をもっと多く持ったほうがいいような気がします。そして、何より、人間関係によって仕事が成り立つということを確認すべきでしょう。それにしても、乳幼児期から「関わり」を意識できる環境が子どもたちには必要であることを今回のブログを読みながら思ったところです。

  5. ドイツと日本、憧れる職業が異なる気がしますね。それだけの経験を積める環境下で、子どもたちは多様な将来を描いていける筈です。
    カッコイイ大人、カッコイイ仕事が減ってきていると耳にしたことがあります。テレビをつければ大人が謝っていて、そんな場面ばかり見てその仕事に憧れる方が難しいでしょう。保育はどうでしょうか。先生の築き上げたもの、築き上げていくものはとてもカッコイイです。この気持ちはきっと子どもたちにも伝わるものだと信じています。20年後、一緒に働く仲間と生活を共にしていると考えると、毎日が違って見えますね。

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