漢字

 先日、園のご近所の方がある本を持ってきてくれました。その本の出版社は、「登竜館」といいます。たぶん、昨日のブログの「登竜門」から来ているのでしょう。この出版社の案内には、「幼児の心と言葉を豊かに育むための、石井方式の絵本・教材・指導法を提供しています。」とあります。私は、もう20年以上前になりますが、石井方式の実践園の見学と、石井氏の講演を聞いたことがあります。教育学博士でもある石井勲氏は、残念ながら2004年に、85年の生涯をとじられましたが、実は、八王子市にも縁があります。彼は、戦後、高等学校教諭として初めて教壇に立ち、その後、中学校、小学校の教諭を勤めます。そして、小学校教諭時代に「石井式漢字教育指導法」を次々と発表したのです。そのあと、八王子市教育委員会指導主事、大東文化大学幼小教育研究所長、同大学付属幼稚園青桐幼稚園園長を歴任して、石井式教育研究会を立ち上げています。松下政経塾講師もしたことがあります。
 石井方式というと、なかなか奥が深くて、また、実践している園からすれば、私の印象は的を得ていないかもしれませんが、あまりよく知らない人にとっては、なかなか面白いところがありますので、そこのところだけ少し考えてみます。まず、「幼児には漢字の方が覚えやすい」ということでしょうか。漢字は一字一字に意味をもつ『見る言葉』と捉えます。その点、ひらがなは、一字一字に意味をもたない、いわば発音記号(表音文字・聴覚言語)なので、ひらがなで表わす言葉は、それがもつ意味までは表わしません。「木」がたくさんあるから「森」なんだと、漢字で言葉を知ると、その意味まで理解できます。つまり、漢字は考える力や理解力を育てる道具となるのです。小さな子どもにとっては、絵や記号を見るのと同じ感覚で、楽しんで覚えるからです。そして、その覚える順序が、大人が思うのと違うのです。これは、私には、目からうろこでした。幼児を集めて、『鳩』『九』『鳥』の漢字のうち、どれが覚えやすいかを調べた実験があります。結果は、一番覚えやすいのが『鳩』、次が『鳥』、最後が『九』でした。幼児は、具体的なものほど覚えやすく、抽象的なものほど覚えにくいようです。つまり、幼児にとって、文字の覚えやすさは、そのものをイメージできるかどうかであり、字形の複雑さとは関係のないことがわかります。私も園児に「虫」と「蟻」で試してみました。「蟻の方を早く覚えます。また、部屋の窓に、「まど」と「マド」と「窓」をしばらく貼っておいて(ほかにも、「戸」とか「壁」とか「机」など)、はがしたあとで、子どもにどの字を覚えているかやってみたところ、ほとんど漢字でした。漢字は、確かに音ではなく、形を表していることが多いからでしょう。ですから、辞書や絵本などは、漢字かな交じり文で書かれているのを読み聞かせるといいかもしれません。ただ、私は、その漢字には、読み仮名をふったほうがいいと思うのですが。(石井方式では、漢字を見ずに、読み仮名を追ってしまうので、仮名はふりませんが)また、私の見た実践園では、漢字をフラッシュカードのようにすばやく見せて、どんどん言わせていたことが気になりました。漢字は、考える力をつけるはずなのにと思ってしまったのです。もう一つ、その園では、子どもを一斉に立たせるとか、歩かせるとか、移動させるとか、すべて、ピアノの音で指示をしていたのも気になりました。どこまでが「石井方式」か、わかりませんが。