2010年03月11日 [近頃思うこと]
協働
最近、私は人の遺伝子は社会を形成するために様々なものが組み込まれている気がしています。それは、現在、人間が持っている特性を見ても、集団を形成することに適しています。そして、その集団は、競うためにあるのではなく、共生し、協力するために必要だったはずです。しかし、いつもの間にか、競争社会と言われ、人に勝つこと、人より抜きんでることが目標になり、そうなることによって一つの価値観での競争になっていっています。人それぞれがいて社会なはずが、同じようなことを全員一斉にやり、その中で競争させられています。もう一度、それぞれの役割の中で、協力したり、協働していく社会をつくらないといけない気がします。
昨日紹介した記事の中で、フィンランドに留学した庄井氏がその時の体験を話しています。「1990年代の終わりごろ、フィンランドに留学した。現地で思い出すのは、保育園で行われていた昔語りだ。テンションを上げる必要はない。話は静かに始まり、子供たちも静かに集まって車座になる。各家庭でも、子供が思春期になるまで、ベッドサイドで親が読み語りをするのが普通だ。この国では、物語を語る人と聞く人との間に、私たちが忘れかけていた原風景がある。人が語る言葉にはそれぞれに人生の重みがある。語り合うことで、人と人との知恵が重なり、新しい物を生み出す力が発揮される。これが、教育大国フィンランドの社会的土台にある、人と人とのコラボレーション(協働)だと、私は考えている。」
このようにフィンランドでは、子供と親が、子供と教師が、そして子供たち同士が対話し、「ともに学び合う」ことをとても大切にしているそうです。そして、フィンランドの子供は、競争で人に勝つといったことに余計なエネルギーを使いません。「3か月前と比べてここは伸びてきた」「ここは持ち味だから頑張ろう」「ここは苦手だけど先生が応援してくれるから頑張ろう」。それぞれが自分の人生を豊かにするために学んでいるのです。
先日、私の園が行った「成長展」は、「今、子どもがどんな作品を作れるか」ではなく、「どんな作品が作れるようになってきたか」というように、子どもの姿をデジタルで見せるのではなく、アナログで見せようという試みです。また、一人ひとりの違いを大切にするような展示を心がけています。どうしても親は他の子と比べたがるのですが、この成長展では、わが子の成長を確認するために、それをクイズ形式にして見ていくようにします。ある保護者が私の姿を見つけると、「私は、とても優秀な成績でした。」と自慢してきたので、「おかあさんは、よく子どもを見ているからですね」と喜んであげました。
庄井氏は、インタビューに「フィンランドの高校生に一番人気の職業は、医者でも弁護士でもなく教師だ。教育系の大学の入学者は、長い面接と集団討論を経て、選抜される。採用に当たっても、総合的な力が重視される。困難にぶつかった時に一人で抱え込まず、共同で解決する力もその一つだ。日本で教師が困難にぶつかったら、教師の自己責任になる。教師はなるべく問題が起こらないように振る舞い、子供たちもなるべく間違わないよう、いつも成功するよう、という空気を感じて生きている。これでは子供の隠された能力が発揮できない。」と答えています。
フィンランドの子どもたちは、失敗しても、その子を責めることはせず、つまずいても失敗しても、それが人間の生きる姿だとおおらかに認めながら、人と人が頭を寄せ合って事を解決していきます。日本では、今、学力レベルは低く、いじめ、不登校も多いなかで根本的な改革が求められています。
投稿者 fujimori : 23:33 | コメント (0)
2010年03月10日 [近頃思うこと]
内的
フィンランドの「キッズスキル」という手法をいくつか紹介しましたが、また、どこかで残りのステップが紹介できたらと思っています。このように、フィンランドの取り組みはとても参考になることが多いのですが、それだけではなく、その取り組みから、子どもたちにどんな力をつけていくのか、そのためにどんな教育方法がとられているのかという点でとても参考になることが多くあります。

読売新聞より
そのひとつに、「起業家精神教育」というものがあります。それについて、昨年の夏ころに、第15回「よみうりほっと茶論」の中で、東海大国際文化学部教授の川崎一彦さんと北海道教育大教授の庄井良信さんが、紹介していました。
今や、世界の中では、製造業では中国が大躍進をし、いわゆる先進国は製造業から「知業」へ移行しています。知業とはソフトや情報、デザイン、ブランドなどの知的財産を生み出す産業です。この発想の転換に日本は乗り遅れている感があります。フィンランドでは90年代前半に当時最大の貿易相手国だった旧ソ連が崩壊し、不況に陥りました。しかし、90年代後半には、戦後最大の経済成長を遂げたのです。それは、一言で言えば、知業化が進んだためであり、そのための教育をしてきたからだと言われています。そのための教育のひとつが「起業家精神教育」なのです。
フィンランドでは80年代から、起業家精神を「外的」「内的」の二つに分けて考えるようになったそうです。外的起業家精神とは物やサービスの提供で付加価値を創造することで、いわゆる日本でよく言われるような起業家精神というものです。それに対して、内的起業家精神とは、創造性や自信、柔軟性、活動、勇気、イニシアチブ、リスク管理、協調性など、起業家としての資質を言います。この内的起業家精神をつけていこうという教育です。その教育は、フィンランドでは、「大企業に勤めようが公務員であろうが、必要になる」と早くから考えられていて、教育省も就学前の早い段階からこの精神を学ばせる必要性を認識していたと言われています。
今、世界では乳幼児教育が、教育では最優先に考えられはじめていますが、この取り組みも幼児教育の一環として取り組まれています。川崎教授の話では、東海大付属の小中高校では、このフィンランドモデルの教育を実践しているそうです。具体的には、中学生にオリジナルの札幌ツアーを企画させたり、自分たちの校舎の新しいデザインを考えさせたり、付属幼稚園では車を作るプロジェクトをさせたりもしました。この試みは、創造的で勇気があって、目的意識が明確で、協調的で根気強く、ほかの子とうまくやっていける――そんな子供を育てることを目指していると言います。
この「内的起業家精神教育」は北欧諸国に共通したものかどうかというインタビューに対して、川崎氏は、「この言葉は1980年代にフィンランドで初めて使われ始めた。90年代にはスウェーデンなどにも広がり、一般的に使われている。フィンランド以外の国は、まだ結果を立証できる段階になく、PISAの順位表の上位には現れていない。しかし、保育園から大学までスウェーデンで教育を受けた私の子供を見ていても、日本に比べ、向こうでは「考えさせる教育」が行われている。」と答えています。
これからの学力が「コミュニケーション能力」「問題解決能力」のほかに、「創造性」「自信」「柔軟性」「活動」「勇気」「イニシアチブ」「リスク管理」「協調性」などが必要になってくるでしょう。
投稿者 fujimori : 22:53 | コメント (2)
2010年03月09日 [近頃思うこと]
試験科目
保育園で保育者になるのは「保育士」という資格が必要です。この資格は、養成校を卒業すればとれるのですが、もうひとつは、受験資格がある程度必要ですが、「保育士試験」に合格すれば資格が与えられます。今年の受験の手引き(受験申請書)請求の受け付け、申し込みの発送開始がもうすぐ4月1日から行われます。試験は、筆記試験が8月7日(土)・8日(日)で、試験科目は、「社会福祉」「児童福祉」「発達心理学及び精神保健」「小児保健」「小児栄養」「保育原理」「教育原理及び養護原理」「保育実習理論」の8科目です。試験内容を見ると、保育士に求められているものがどんなものなのかがわかりますが、実際に現場にいると、それって、必要かな?と思ってしまうものも多くあります。それは、実際に現場で働いていいる保育士さんに、この問題をやらせてみたらわかると思いますが、ほとんど落ちるでしょうね。というと悪いのですが、少なくとも、私は確実に落ちるでしょう。基礎的知識は必要だと思うのですが、それは、日々の中で実感していき、深まっていくものでなければならないはずです。私だったら、今学力として求められているような「コミュニケーション力」とか「問題解決能力」とか「柔軟性」とか「チームワーク力」などを試したいですね。しかし、実際に私の園の採用テストは、「早い順」です。
また、実技試験が10月10日(日)に予定されていまが、この実技の内容も、時代によって変わってきています。それは、子どもに対して必要な実技が変わってきているからでしょう。かつては、保育者というと、すぐに「ピアノが弾ける」と同じイメージですが、現場では、ギターが弾ける方が様々な場所で子どもたちが歌うことができ、また、先生も入って円形になって座って、歌を歌おうとすればギターのほうがいいような気がします。また、音楽だけでなく、保育には様々な経験を子どもにさせますので、何か得意なものがある保育者集団のほうがいいような気がします。
そんなわけで、今は、音楽・絵画制作・言語から2分野を選択することになっています。「音楽」では、課題曲が2曲事前に出され、その両方を幼児に歌って聴かせることを想定して、弾き歌いすることになっています。しかし、楽譜は持込んでもいいことになっていますし、ピアノ、ギター、アコーディオンのいずれかで演奏してもいいことになっています。「絵画制作」では、「保育所(園)での子どもたちと保育士との活動の一場面を表現する」のですが、表現に関する条件は試験の当日に提示します。その課題に沿って、鉛筆またはシャープペンシル(HB~2B)、色鉛筆(12~24色)、消しゴムを使って45分で描きます。「言語」では、各自あらかじめ用意した童話等を、自分の前にいる20人程度の3歳児クラスの幼児に集中して話を聞かせる時間という想定のもとに3分以内にまとめて口演することになっています。題材は、自作・他作を問わず、童話・神話・民話・伝説・昔話等自由です。
ギターでも受けられるようになったので少しはいいのですが、何となく男性には不利のような気がします。私だったら、「子どもたちに理念を伝えながら、笑い転げるような映画10分ものを作りなさい」という問題だったら、もっと、保育が楽しくなるのにと思ってしまいます。私の園で、男性保育者が中心になって笑い転げるような映画を作って、それがうわさで話題になっています。
投稿者 fujimori : 21:22 | コメント (3)
2010年03月08日 [新聞記事より]
新聞
今日の朝日新聞に「GLOBE」という新聞が入ってきました。この「GLOBE」は月2回、月曜日の朝日新聞朝刊の真ん中に挟みこまれた新紙面です。2008年10月から月2回、月曜日の朝刊の真ん中に織り込まれてきます。この紙面では、今までの新聞と違う内容で、読者を引き付けようとしています。この紙面での特集記事は、「地球的(グローバル)規模で繰り広げられるパワーゲームやビジネスの最前線で起きている出来事の深層・底流を徹底取材し、ルポを中心にした特集で掘り下げます」と謳っています。また、サイトでは紙面に掲載した特集記事などを紹介するとともに、関連するプラスアルファ情報が掲載されます。今日の特集は、「公務員の使い方/仕え方」です。今までのただ情報を流すだけであった新聞が変わり始めています。
新聞が変わり始めているのは、その記事の内容だけでなく、発信の仕方も変化が起きています。日本経済新聞社では、今月の23 日に、インターネット上に「日本経済新聞 電子版」(Web刊)を創刊する予定です。この電子版は、「今年で135年目の歴史を迎える日本経済新聞社がデジタル技術を基盤にお届けする新しい媒体です」という触れ込みです。その内容は、もちろん日本経済新聞の朝刊と夕刊の最終版の記事全文が読めるのは当たり前ですが、電子版の特徴がいくつかあります。
そのひとつは、日経編集局が24時間体制で取材・編集して随時更新する国内外の最新ニュース、日経BP社など日経グループ各社が集めた専門分野の情報・データやコラム・映像、英フィナンシャル・タイムズなど有力な海外コンテンツパートナーの翻訳記事を厳選して、朝刊と夕刊の間でも最新情報を刻々と編集して届けてくれます。世界中のあらゆる場所に、どこよりも早く朝刊が届き、「今」まさにおきているニュースを24時間リアルタイムで届きます。また、「My日経」で自動収集した記事もパソコンや携帯電話にメールで配信してくれます。
アマゾンで本を購入すると、過去に購入した本や、検索した本を分析して、何に興味があるか、どんな考えの人に興味があるかで、それにあった本を紹介してくれます。同じように、一人ひとりの読者の興味や関心を分析して適切な記事を選んで届ける「おすすめ」機能、登録したキーワードを含む記事が配信されると自動表示する「自動記事収集」をはじめとした、デジタル技術を活用した新しい記事の読み方も提案しています。「いちいち情報を探すのが面倒」「映像でニュースをもっと知りたい」「何を読めばいいのか教えて欲しい」「私に役立つ情報は何?」など、今までは、紙面をめくって必要な情報を探したり、興味のある情報を探していたのが、自動で配信されてくるようです。
そして、パソコンと携帯電話機の両方で読めるようになっており、今後、電子書籍端末やデジタルテレビでの提供も検討しているそうです。そうなることにより、タクシーや電車、空港やホテルのロビーなどいつでもどこでも簡単操作で効率よく必要な情報を見ることができるようになります。
また、このWEB日経は、拡大機能付きなので、小さな画面でも表や写真、グラフがきちんと読めるようですし、表示の仕方も、今まで新聞紙面を見慣れている人にとっては、ネットで配信されてくるニュースはなんだか見にくいのですが、この紙面は新聞のように読めるようです。
時代によって、内容、配信の仕方など新聞は変わろうとしていますが、このような動きに対して、教育の動きは、ずいぶんと遅いですね。
投稿者 fujimori : 23:16 | コメント (3)
2010年03月07日 [近頃思うこと]
新しい学校の提案
子どもたちの身に起きる不幸な出来事を聞くにつけ、世界の教育を知るにつけて、なんて日本の教育は遅れているのかと嘆きたくなります。しかし、これだけ情報が豊かで、世界が近くなっている今、国は世界の教育の動向を知らないはずはありません。当然、研究者たちも世界の教育を研究しているはずです。しかし、どうして変わっていかないのでしょうか。私も、幼児教育では世界の流れの中では当然と思われること、ただ、子ども主体に考えようと提案するだけであって、何も革命を起こそうというわけでもないのですが、なぜか、抵抗にあうことがあります。現実に毎日子どもたちが壁にぶち当たっている状況を見聞きしても、なかなか変えようとしません。
全国の小学校・中学校において、今年から新しい学習指導要領の一部が先行実施され、21 世紀を生きる子どもたちのための学校教育が始められています。それは、今の時代に対しての課題が盛り込まれています。地球温暖化対策をはじめとする環境配慮、学校、家庭、地域の連携が重視され、その課題に向けて、学校施設の整備に当たって、学習活動円滑化や環境配慮、地域との連携といった機能を高める工夫が問われています。このような新たな時代の学校教育等に対応するため、既成の学校施設の形態の枠にとらわれず、実情に応じ、柔軟な発想を含めた検討が有効であると文部科学省では考えています。そこで、これまで実際に整備された学校の中から、新しい工夫があり他の学校にも参考になると思われる施設的な提案について、情報提供をすることとし、小中学校の施設を新増改築、あるいは大規模な改修をするときに、関係者にとって参考になると思われる30 のアイディアを集め、提案しています。
「小学校学習指導要領解説 総則編」(平成20 年6 月)では、21 世紀の教育の考え方について、知識基盤社会化やグローバル化は、アイディアなど知識そのものや人材をめぐる国際競争を加速させる一方で、異なる文化や文明との共存や国際協力の必要性を増大させている状況において、確かな学力、豊かな心、健やかな体の調和を重視する「生きる力」をはぐくむことがますます重要になっていると解説しています。そのための教育目標のための空間を提案しています。
確かな学力の確立に向けた対応では、児童生徒の自主的な学習活動を支える空間や観察・実験、体験活動の充実のための空間、児童生徒の表現力をはぐくむ活動を支える空間が提案されています。また、豊かな心を育成するための施設づくりとして、児童生徒同士の交流を生む空間や豊かな芸術空間などが提案されています。健やかな体をはぐくむ施設づくりでは、日常的な体力づくりや食育の充実のための空間などが提案されています。
具体的には、普通教室は、設えや学習活動に配慮した余裕のある大きさとし、ICTを導入したり作り付け家具を工夫したりすることなどにより、多様な学習が可能となるように計画するものや、学習集団の規模や机の配列の形態が変わるような場合にも対応できることを提案しています。また、複数のクラスでフロアをのびやかに使うことで、多様な学びを支える教室まわりとして、同学年あるいは、低学年、中学年、高学年ごとに、普通教室+多目的スペース(少人数指導のためのスペースを含む)など学年段階に応じたユニットの空間構成とすることで、総合的な学習の時間における調べ学習や習熟度に応じた学習、またティーム・ティーチングなどを効率的に展開することができるとしています。
このような、新しい提案が、身近な学校で行われるようになるのは、いつのことでしょうね。